コラム
鹿児島別院仮掛所設置記念法要厳修
2020年11月1日(日)鹿児島別院において「2020年度鹿児島別院仮掛所設置記念法要」が営まれたので紹介する。
そもそも鹿児島をはじめ、かつての島津氏の支配した地域では、親鸞聖人の教えが禁じられ、厳しい取り締まりがあった。そんな中でもひそかに真宗の法灯を保ってきた人々がおり、この歴史を通称して「かくれ念仏」という。真宗禁制は明治9年の信仰の自由の布達によって解禁に至り、同年11月1日には松原町大門口近くの料亭「春風」を借りて、東本願寺仮掛所の看板を掲げて開業式を行った。
そして、来たる2026年は真宗禁制解禁150年目にあたり、九州教区鹿児島エリアでは、その年の春に、「南無阿弥陀仏 いつでも どこでも だれにでも」をテーマとして「宗祖親鸞聖人御誕生850・年立教開宗800年・薩摩真宗禁制解禁150年記念事業及び慶讃法要」が厳修される。
今回の記念法要は、2026年の慶讃法要のお待ち受けの一環として、これから6年間にわたって毎年厳修されていくものであり、その第1回目にあたる衆会であった。法要の全体のプログラムとしてはお勤め、教区合唱団によるかくれ念仏讃歌、安藤保氏による記念講演、つづいて場所を大谷会館に移し、交流会が催された。
開式に際し、齊藤曉生鹿児島別院輪番に話を伺うと、「(自身が)ようここまで生きとった。ご縁に会えたということがまず喜び。そして2026年の慶讃法要のお待ち受けとして、この第一回目の法要が勤まることの喜び。これをスタートにして、いよいよ慶讃法要の円成を願いたい。」との意気込みを語ってくださった。
14時になり、法要が厳修された。今回は新型コロナウイルス感染症拡大防止に考慮し、慶讃法要に関する委員のみに案内し、当日は窓は開けての常時換気や、消毒スプレーも各所に設置し、入場時にはひとりひとりに検温を行うなどの対策を行った。
15時からは、かくれ念仏讃歌の美しい歌声が本堂に響いた。かくれ念仏讃歌は約20分に及ぶ劇調歌で、合唱団の35名はフェイスシールドをつけての歌唱であったが、時に軽微に時に荒々しく転変する曲調を見事に歌いあげた。
15時30分からは、鹿児島大学と九州大学の名誉教授である安藤保氏が『真宗禁制解禁百五十年に向けて』という講題で記念講話をされた。
閉会では、慶讃法要小委員会・かくれ念仏検証実行委員会幹事の佐々木智憲氏の挨拶があった。佐々木氏は、過去の旧鹿児島教区の真宗解禁にまつわる記念法要が「薩摩開教」と銘打たれてきたことに対し、このたびの法要が「真宗禁制解禁」の記念法要であることを強調されていた。
「開教」という表現はかくれ念仏時代の人達をおのずと未開であると肯定してしまう。そうではなく、真宗禁制の時代にも、親鸞聖人のみ教えに生きた薩摩門徒はいたのである。
また、佐々木氏は続けて、「仮掛所が出来ていく背景には、300年近くに亘って真宗門徒として生きた人たちがいた。その人たちのことを忘れてはいけない。そのことを改めて顕彰していくことが大切である。」とも述べられた。
今回の鹿児島別院仮掛所設置記念法要に御会いし、先達のお姿に思いを致すなかで、あらためてこの11月1日という日を、私たち薩摩の門徒にとっての大切な日として定着させていくことの重要性を実感した。
鹿児島組通信員 中谷潤心