「ただ、往生極楽のためには、南無阿弥陀仏と申して、疑(うたがい)なく往生するぞと思いとりて申す外には別の子さい(細)候わず。」 (『真宗聖典』962頁 「一枚起請文」)

最近、私はSNSを通じて他宗の友人が増えました。その中で浄土宗の方と話す際に法然上人の一枚起請文を改めて読み直しました。法然上人が亡くなる直前に記され、弟子の勢観房源智に授けた文ですが、法然上人の御言葉でありながら、私は親鸞聖人と蓮如上人を思うのです。

 

「親鸞におきては、ただ念仏して、弥陀にたすけられまいらすべしと、よきひとのおおせをかぶり(蒙)て、信ずるほかに別の子細なきなり。」
(『真宗聖典』627頁 「歎異抄」第二条)

 

「ただ一念に弥陀をたのむ衆生は、みなことごとく報土に往生すべきこと、ゆめゆめうたがうこころあるべからざるものなり。」
(『真宗聖典』835頁 「御文」第五帖目六通)

 

他にも沢山、感じ入る文章はございますが、一人一文ずつ取り上げました。親鸞聖人は歎異抄の第二条からです。関東から遥々訪ねられた御同行さんに対して、あなた方が私を訪ねたのは往生極楽の道が聞きたいからですねと仰られ、その次に私におきましては法然上人の仰せの通りに弥陀の本願を信じて念仏して弥陀に救われることを信じる以外ないと、取り上げた言葉に繋がるのですが、内容が似通っている故たまたまか、それとも寄せたのか、別の子細なしという言葉使いも似ていて、一枚起請文を読んだ時にまず頭に浮かんだのがこの言葉でした。
当時の関東から京都までの旅は大変なことです。その御同行さんに往生極楽の道が知りたいから来たのだと一言に込める親鸞聖人のおこころが続く「ただ念仏して、弥陀にたすけられまいらすべし」であり、それは法然上人から頂いた大事な教えをまさに人へ広めるべく発せられたのだと思うと、教えの継承とその流布をありがたく感じました。
蓮如上人の御文に関しては五帖全体を通して念仏往生を説く際に弥陀の本願を疑いなく信じるように申されている箇所が多く、一枚起請文の続きにある「三心四修と申す事の候うは、皆、決定して南無阿弥陀仏にて往生するぞと思う内に籠り候う也。」「念仏を信ぜん人は、たとい一代の法を能く能く学すとも、一文不知の愚どん(鈍)の身になして、尼入道の無ち(智)のともがらに同して、ちしゃ(智者)のふるまいをせずして、只一こう(向)に念仏すべし。」等も御文の中に息づいているように私は思います。
友人との出逢いが、法然上人から親鸞聖人へ蓮如上人へと教えが連綿と続いているのだと味わわせていただくご縁になりました。

 

奥村誓至

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