人間は死を抱いて生まれ、死をかかえて成長する『信國淳選集』第六巻「第一部浄土」柏樹

私たちは誰もが「生まれたものは死に往くもの」とは知っていても、死を抱えて生きているという実感がないのが事実です。死はこの身において成熟するものと言われますが、まことにその通りだと言わねばなりません。

私はこの歳になって初めて老眼を体験しました。まさに我が身が老いゆくもの死にゆくものであるという事実を突きつけられました。まさに死を抱えて生まれてきたという事実を分かったつもりでいる人間的未熟さを感じずにはおれませんでした。

人間は、いつまでも生きたいとおもう心によって死を逃れようとし、若さを誇って老いゆくことを厭う。そこに私たちの生に対する不安や苦悩が現れます。

しかし、それらの問いが「あなたはこれからどう生きるのか」ということに立ち帰さらせるはたらきとして受けたとき、本当に人間として生きる(成長)ということが始まるのでしょう。

亀井 攝

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今月の言葉28

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今月の言葉27

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今月の言葉26

私たちは誰もが「生まれたものは死に往くもの」とは知っていても、死を抱えて生きているという実感がないのが事実です。死はこの身において成熟するものと言われますが、まことにその通りだと言わねばなりません。 私はこの歳になって初めて老眼を体験しました。まさに我が身が老いゆくもの死にゆくものであるという事実を突きつけられました。まさに死を抱えて生まれてきたという事実を分かったつもりでいる人間的未熟さを感じずにはおれませんでした。 人間は、いつまでも生きたいとおもう心によって死を逃れようとし、若さを誇って老いゆくことを厭う。そこに私たちの生に対する不安や苦悩が現れます。 しかし、それらの

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