今月の言葉32

真宗大谷派九州教区
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今月の言葉32

2023.03.02

「真の知識にあうことはかたきがなかになおかたし」
親鸞聖人『高僧和讃』

 先日ここ3、4年会えていなかった友人が亡くなったと連絡がありました。その瞬間深い悲しみに包まれましたが、その後徐々に私に湧いてきた感情は、その訃報を届けてくれたその友人の妻に対する感謝の思いでした。「ありがとう」とここまで心の底から思ったことはありません。

 私たちが日常的に使う「ありがとう」という言葉は、もともと「有り難し」から来ていて「存在することが難しい。滅多にない」という意味です。人から受ける恩もそれが当たり前だと鈍感になれば、口では「ありがとう」と言っても、ただのあいさつとなんら変わりません。ただ私たちは生死の問題の前に立つと、普段当たり前だと思ってしまうものの「有難さ」に気づかされるようです。

 親鸞聖人は9歳で出家し、そこから20年間比叡山で修行をされます。しかしお悟りを開くことはできず、その後法然上人のもとでようやくお念仏のみ教えに出遇われました。その長い年月の間、法然上人はすぐ近くでお念仏のみ教えを説かれていたにも関わらず、出遇うことができなかった。そこに出遇うことの難しさと、出遇えたときの感動を感じ取ることができます。

 それは私の努力では出遇うことができなかったが、ここにこうして阿弥陀様の働きによって、出遇うはずのないものに出遇うことができたという深い感動だったのです。

佐々木 信行