[今月のコラム]まさかという坂
2025.01.06
まさかという坂
1995年(平成7年)1月17日・火曜日・午前5時46分に起きた「阪神淡路大震災」から30年。被災された方がテレビのインタビューの中で、「まさかの出来事でした」と涙ながらに語っておられた。誰の言葉なのかは不明のようであるが、「人生には坂がある。上り坂、下り坂、そして突然やってくる”まさか”の坂がある」という言葉。私たちの生活の中での出来事はまさに「まさか」の連続である。元気だった両親をはじめ夫や妻や子、兄弟姉妹、親しい友人を亡くした時などは「まさか」と現実を受け入れられない。自然災害をはじめ、特に親しい人から身をもって私の思いを超えた出来事・「まさか」が起こることを教えられる。そして”あなたはいつも自分の思いを疑うことなく生きているのではないですか”とも問いかけられるのである。
人生では、自分にとって都合の良いことも悪いことも起こる。むしろ都合の悪いことの方が多いのではないだろうか。そして、「こんなはずではなかった」と嘆くのである。
被災された方は、さらに続けて「お父さんがいることが”あたりまえ”、お母さんがいることが”あたりまえ”であった私にとって”まさか”の出来事でした」と語る。”あたりまえ”と思っていると「有り難う」という言葉さえ出てこないのではないだろうか。父を亡くしてはじめて父の有り難さを感じ、母を亡くしてはじめて母の有り難さを憶う。そしてまた、亡くなった方から育てられ、亡くなった方とあらためて出会いなおすということが起こるのではないだろうか。
阪神淡路大震災をはじめ頻繁に起こる各地の災害によってもたらされる癒えぬ悲しみの中から、あなたには、何が聞こえてくるでしょうか。