今月の言葉 15
2020.11.01
人間は生死(しょうじ)の苦しみをのがれようとして、生死に苦しんでいる
曽我 量深
わたしたちは、なるべく悲しみには出会わずに日々を楽しく生きたいと、つい非現実的な在り方に埋没しそうになります。
そういう風に、明るく元気に、そして病気をせず長生きすることが美徳だと思えば思うほど、死に往かなければならない我が身を嘆き、そのことを思う度に苦しまなければなりません。
それは自ら造った苦しみに自らが苦しめられていることになるのです。
わたしたちは「生あるものは死に帰す」という『無常の道理の中に生まれた自分』であるということを受け入れられないが故に苦しんでいます。
ですから、生死の苦しみから逃れるという在り方は、現実的ではないのです。
むしろそれを受け入れられないとしても、それを受け入れようとする心のおこるところに真に自由なる世界(=浄土)が開けてくるのです。
(亀井攝)