[今月のコラム]比べるこころ
2025.06.01
誰しも歳を取ると”老い”を感じることがたくさんあるのではないだろうか。朝起きると体のあちこちが痛くて動かさないと起き上がることさえ出来ないこと。小さな段差でも躓きこけそうになること。走ると足が縺れそうになること。体を動かすと数日後になって体に痛みが出てくること…。そんな状況を嘆いて「最近、体が言うことをきかなくなってきた。つまらんようになってきたわぁ~(情けないことになってきたわぁ~)」との言葉を聞くことがある。しかしどうだろうか。大事な用事の時に風邪を引いてしまうなど、体は自分の思いなどをきいてくれていないことなど、既に承知のことなのではないだろうか。
私たちは、若い時と今の「自分の自分」を比べ、病気の自分と健康な他人、老いた自分と若々しい他人など「自分と他人」を比べ、そして、自分の子供さえも兄妹姉妹を比べ、我が子と他人の子供を比べるなど「他人と他人」さえも比べる。どうやら私たちの日常は比べてばかりのようだ。ある先達が85歳になった祝賀会の挨拶で、「私も初めて85歳になりました。85歳という新しい人生を生きています。」と語られた。量り知れないいのち・量ることのできないいのち・比べることのできないいのちを私たちは生きているのですよ、と改めて教えてくださっているように思う。
私にとって誠に都合の悪い老いや病いや死が人生を見直させてくださることとなり、更に人生を輝かせてくださるものとなることに気づかされる。
比べてばかりの私たちに、人生の長短ばかりに囚われている私たちに、人生には深さがあるのだと教えてくださっているのではないだろうか。