[今月のコラム]迷惑

真宗大谷派九州教区
お問い合わせ contact

よみもの

Column

背景

[今月のコラム]迷惑

2025.12.01

特にご高齢の方から、”子どもには迷惑をかけたくないんです”という言葉を聞くことはないだろうか。「迷惑をかけたくない」という思いは、金銭的なことや介護をはじめ、葬儀・お墓のことなど、亡くなった後のことも考えてのことであろう。昨今盛んになっている「終活」の心根には、この思いがあるのだろう。多くの人は、小さい頃から、「人に迷惑をかけないようにしなさい」と言われ育てられてきたのではないだろうか。確かに、迷惑をかけないように努力することは心がけなければならない。しかし、人は本当に迷惑をかけずに生きることが出来るのだろうか。人は迷惑をかけずに生きているのだろうか。「人に迷惑をかけるな」「自分のことは自分でしなさい」と言われると、人は生きていけなくなるのではないだろうか。
日々の生活の中で、誰しもが顔も知らない多くの人々にお世話になり、迷惑をかけて生きているのではないだろうか。特に人間の赤ちゃんは、産まれた時には誰かに抱きかかえられ、世話になり、迷惑をかけて大きくなる。また、亡くなった時も誰かに抱えられ荼毘に付されるのだ。人は生まれた時と死んだ時には、必ず誰かの世話になっているのだ。私たちは、そのことさえも忘れてしまっているのではないだろうか。
人は、世話になり迷惑をかける生き物である。だから「人間」というのではないだろうか。
そんな私たちに、仏さまは、「どれだけの人に迷惑をかけている自分であるのかを潔く知りなさい。」「他のいのちに迷惑をかけないと生きていけない自分であるのだと知りなさい」と語りかけてくださっているのではないだろうか。