我必ず聖にあらず
彼必ず愚かにあらず
共に是れ
凡人(ただひと)ならくのみ『十七条憲法』 聖徳太子

ニュースや新聞は新型コロナウイルスの報道ばかりです。不要・不急の外出自粛で家族と過ごす時間が多くなっているのではないでしょうか。

さて、聖徳太子は御存知のように仏教に深く帰依され、役人の心得を記した『十七条憲法』にも仏教の影響が色濃く見受けられます。その第十条に上記の一文があります。私達は人と向かい合う時、どうしても相手に優劣や分別をつけながら接してしまいます。相手が自分より劣っていると判断した途端に、相手の声が聞こえなくなってしまいます。聖徳太子はそのような人間の傲慢さを戒めたのではないでしょうか。仏の智恵に照らし出された我々人間は、共に凡夫の身であるという仏教的な平等性がこの背景にはあります。

ところで、この戒めは何も役人の為だけに存在している条文だとは思えません。私達の様々な人間関係に当てはまるのではないでしょうか。新型コロナ禍によって、私達を取り巻く環境が一変しようとしています。だからこそ、今一度目の前に居る人と向き合う時に自身が如何なる立場に居るのかが問われるのではないでしょうか。

(大城 史雄)

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今月の言葉

今月の言葉32

 先日ここ3、4年会えていなかった友人が亡くなったと連絡がありました。その瞬間深い悲しみに包まれましたが、その後徐々に私に湧いてきた感情は、その訃報を届けてくれたその友人の妻に対する感謝の思いでした。「ありがとう」とここまで心の底から思ったことはありません。  私たちが日常的に使う「ありがとう」という言葉は、もともと「有り難し」から来ていて「存在することが難しい。滅多にない」という意味です。人から受ける恩もそれが当たり前だと鈍感になれば、口では「ありがとう」と言っても、ただのあいさつとなんら変わりません。ただ私たちは生死の問題の前に立つと、普段当たり前だと思ってしまうものの「有難さ」に気づか

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今月の言葉

今月の言葉31

 近年、LINEやメールなどSNSを使うことから、年賀状を作って送る人が減っていると聞く。新年に配送される年賀状を見て、久しぶりに思い出す懐かしい顔も多い。その年賀状には、“今年こそ、今年こそ”の文字をよく見かける。その言葉を見ると、思いをこえて生まれながら、なんでも思いどおりにしようとする人間・私のすがたが照らされているように感じる。  私たちの人生は、思い通りにならないものなのだとあらためて教えてくださる。もちろん、自分の努力で思いが叶(かな)うことは多少なりともあるだろう。  しかし、身の事実をはじめ、多くは思いどおりにならないことばかりではないだろうか。また、自分の思いどおりになっ

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今月の言葉

今月の言葉30

 標記のご法語は、親鸞聖人のお書きになられた『教行信証』のはじめにあるおことばです。  私はお寺に生活しておりますので、日頃よりご門徒さんと一緒にご法事や祥月命日などのお参りをさせて頂いておりますが、そのなかで、最近あらためて考えさせられることがあります。それは、法会の場で目の前にお座りになられているご門徒さん方がこうやって手を合わせられる、そのご縁を作ってくださっている方々のことです。先にお浄土にかえられたおじいちゃんやおばあちゃんかもしれません。お父さんやお母さんのお姿かもしれません。あるいはお盆やお彼岸などでお参りされる方の姿かもしれません。そういった「南無阿弥陀仏」と手を合わせる方々

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