コラム
九州教区 慶讃法要お待ち受け大会(午前の部)
2022年4月10日(日)熊本城ホールを会場に、九州教区宗祖親鸞聖人御誕生八百五十年・立教開宗八百年慶讃法要お待ち受け大会が開催されました。九州教区と改編されて以来、九州の真宗門徒が一堂に会する、初めての大規模な法要となりました。
九州一円から、まさに「おのおの十余か国のさかいをこえて」、1,254名が詰めかけました。皆さん、ともに集える日を待ちわびておられたのでしょう、久しぶりに御同行と顔を合わせることのできた喜びに瞳を輝かせ、語り合い、ともにお念仏することの嬉しさが、全身からにじみ出ているようでした。お待ち受け大会は、午前、午後の2部制で実施されました。ここでは午前の部をレポートします。
(午前の部・子どもパレードと花まつり)
今回会場となった熊本城ホールは、2019年に熊本市の中心・新市街地区に建てられた大型複合施設「サクラマチクマモト」の中にあります。コンセプトは「熊本城と庭つづき」。桜町・花畑地区再開発の一環として、建物の中には、ファッション、雑貨、飲食店など約150店が軒を連ね、バスターミナルも併設、テラスには広い庭園と水遊び場がしつらえられています。県内には2016年の熊本大地震の傷跡がまだ残るものの、復興に向けての歩みが着実に進んでいることを感じました。
パレードは午前10時に新市街アーケードを出発。熊本の若手僧侶2名が、間衣姿で3メートルはあるかと思われる重そうな仏旗を掲げて、子どもたちを先導しました。続いて園児らが「真宗大谷派 宗祖親鸞聖人御誕生850年立教開宗800年慶讃法要お待ち受け大会 花まつりパレード」と、書かれた横断幕を掲げて行きます。今回のパレードはお稚児姿ではなく、それぞれの園の園服・マーチング衣装・紋付きケープ・園オリジナルTシャツでの行進でした。誕生仏の御堂を載せた大きな白象が人目を引く。真宗本廟(東本願寺)から、東本願寺キャラクターの“鸞恩くん”“蓮ちゃん”“あかほんくん”も駆けつけ、子どもたちに大人気でした。園の先生方、子どもたちの保護者・祖父母も一緒にスタート地点に立ち、総勢500名ほどが集まりました。
御門首・九州教務所長・九州大谷短期大学学長・講師の真城義麿氏・教区役職者らが、あたたかい眼差しで子どもたちを見守る中、砥用(ともち)音楽幼稚園の子どもたちの鼓笛演奏が始まり、パレードが始まりました。太鼓のリズムと第九交響曲『歓喜』のメロディーがあたりいっぱいに響き渡り、アーケードを荘厳しているかのようでした。折しも「くまもと花博」が開催されており、花まつりに合わせたかのように、沿道の至る所に生花が飾られていました。子どもたちの力強い演奏と、白象とともに溌剌と歩む“ほとけの子”たちの姿は、熊本の街を大いに元気づけたことでしょう。15分ほどであったが、これからの九州教区の歩みの道筋を、このパレードが示してくれているように感じました。
その後は熊本城ホールに会場を移動しました。ステージでは、まず明光保育園の園児による和太鼓の演奏が行われました。創作太鼓「和楽」「時空平衡」の二曲を一所懸命に演奏する姿がかわいらしく、小さな子たちがこの日のために練習を重ねてきたことを思うと、胸がいっぱいになりました。
続いて 花まつり法要が始まりました。先ほどのパレードで子どもたちと街を練り歩いた白象と各園の代表園児がステ―ジに上がり、供灯供花を行い、三帰依と讃歌を唱和しました。
その後、中根慶慈九州教務所長(当時)が子どもたちに「“お友だち”のみなさん」と呼びかけられました。年齢に関係なく、お念仏の場を共にする人は“同朋=友”であるという思いの伝わる呼びかけでした。
「ナムアミダブツは仏様のお名前。正しい教えを聞いて、みんな仲良くしますというのが仏様の願い、ナムアミダブツはありがとうの心、人をやさしく豊かにします。(三帰依にあるように)「皆、仲良くします」の未来を歩んで行ってください。」
と、“おともだちとおとなたち”に挨拶を述べられました。
続いて、大谷暢裕門首が
「今日のパレードは華やかでにぎやかでうれしそう・楽しそうで心温まる、踊りたくなるようなエネルギーを感じました。皆、仲良く楽しく元気いっぱい力一杯生きていけるように」
と、エールの言葉を贈られました。門首継承後初のお待ち受け大会に、御門首も心浮き立つような明るい気持ちになっていただけたようでした。
その後、誕生仏に甘茶をかける灌仏が行われ、引き続き九州大谷短期大学准教授・吉栁佳代子氏による手遊びが始まりました。パレードの疲れもあってか少し集中力が落ちてきた子どもたちでしたが、吉栁氏の呼び声とアクションに一気に引きつけられ、となりのトトロの「さんぽ」の歌と手遊びを楽しみました。客席通路に、九州大谷短期大学の学生さんたちも立って、子どもたちが手遊びをより楽しめるようお手伝いしてくださいました。講師の真城義麿氏、三明智彰九州大谷短期大学学長、古賀堅志参務ら「おとなたち」も、笑顔で手遊びを楽しんでいて、会場全体がなごやかで明るい雰囲気に包まれました。「手をたたきましょう」「指遊び」「小さな庭」「やきいもグーチッパ-」など、子どもたちにも大人にもなじみがあるプログラムの合間に、子どもたちにわかりやすい言葉で教えに基づいた語りかけをして「みなひとりひとり大切なほとけの子」というメッセージを伝える吉栁氏の手遊びは、大谷保育の「本願に生き、ともに育ちあう」という理念を体現しておられました。
プログラムの最後は、樋口光融氏の伴奏による恩徳讃唱和です。こうして、大勢の人たちと恩徳讃を唱和できるのは何年ぶりでしょうか。今回の大会が、未来を担う子どもたちによる“花まつり”法要から始まったことに、『安楽集』の「前に生まれん者は後を導き、後に生まれん者は前を訪え、連続無窮にして、願わくは休止せざらしめんと欲す。」の言葉を思い出しました。
法要を終えてロビーに出ると、ガラス張りの向こうは抜けるような青空で、遠く熊本城が見えました。水遊び場では法要を終えた子どもたちがずぶぬれになりながら走り回っています。ここは穏やかで安全だけれど、青空の彼方には戦争で苦しんで辛い思いをしている子どもたちがいます…そのことを思い出しました。
九州教区 広報部門員 下津 悦子