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今月の言葉

今月の言葉 12

朝日新聞で鷲田清一氏が連載している『折々のことば』(2020年8月26日朝刊)から。 ナチス時代のユダヤ人迫害から現代の酷薄な差別発言まで、人はなぜ「正義」を装い、嬉々として少数者を排撃するのか。ポイントは、権威を後ろ盾にした「責任からの解放」にあると社会学者は言う。 つまり責任を負うべき〈顔〉を隠せること。匿名でしか声を出せない人は、他者を属性でしか見られない。何より自身がもはや属性でしかないから。『ファシズムの教室』から。

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今月の言葉

今月の言葉 11

この言葉は1998(平成10)年に勤修された、蓮如上人500回御遠忌のテーマです。当時本山に勤務していた私は、このテーマ発表の場に携わらせていただきました。 東本願寺の御影堂には大スクリーンが設置され、時の能邨英士宗務総長が、映し出されたこのテーマを発表すると、堂内にどよめきが起こりました。 このような宗門内外のテーマといえば、「ともに」「同じく」「一心」といったような、心を一つにしてというような言葉がそれまでは多かったように記憶しています。 一般的に「バラバラ」という言葉は、物が壊れたり、人と人との関係性が崩れたりするときに使う文言であり、宗門が外に発信する

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今月の言葉

今月の言葉 10

私の思い込みを振りかざし、娘や妻のこころを深く傷つけていたことに気づかされたとき、このご和讃を思い出しました。 作家の高史明さんは、中学生の息子さんを自死で失くされた体験から生まれた著作『「ことばの知恵」を超えて―同行三人』(新泉社)に、このご和讃を引かれ、人間中心の知恵の闇を語ってあります。私は自分の「ことばの知恵」に酔い、のぼせていたことを、身近な人の笑顔が消えたことで知らされたのでした。 人間は多かれ少なかれ言葉の知恵を善として優劣を競い、より快適な生き方を求めることが正しいと考えていると思います。 けれども自分の言葉の知恵を疑うことなしに正しい

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今月の言葉

今月の言葉 9

ニュースや新聞は新型コロナウイルスの報道ばかりです。不要・不急の外出自粛で家族と過ごす時間が多くなっているのではないでしょうか。 さて、聖徳太子は御存知のように仏教に深く帰依され、役人の心得を記した『十七条憲法』にも仏教の影響が色濃く見受けられます。その第十条に上記の一文があります。私達は人と向かい合う時、どうしても相手に優劣や分別をつけながら接してしまいます。相手が自分より劣っていると判断した途端に、相手の声が聞こえなくなってしまいます。聖徳太子はそのような人間の傲慢さを戒めたのではないでしょうか。仏の智恵に照らし出された我々人間は、共に凡夫の身であるという仏教的な平等性がこの背景には

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今月の言葉

今月の言葉 8

新型コロナウイルスの感染が確認されたクルーズ船に対しての日本政府の対応が批判される中、ネットや巷の声に「なぜ日本が批判されなければならないのか」「そもそも船はよその国の船ではないか」「中国人がもってきたウイルスではないか」「中国人が持ってきたウイルスで日本が批判されるのは腹が立つ」「入れさせるな、さっさと帰れ」等の声がありました。 もしも、あの船に中国人の友だちが乗っていたら、どう思うでしょう。また、家族が乗っていたら、知り合いがいなかったとしても、目の前で苦しんでいる人を見たら、それが我が子と同じ年頃の人だったら、「助けてください」と言っている人を前にして、「さっさと帰れ」と言

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今月の言葉7

2019年12月4日、医師でペシャワール会現地代表の中村哲さんが亡くなった。 医療支援を目的にアフガンにわたるも、食糧難や紛争の惨状を目の当たりにし、「百の診療所より1本の用水路を」と、砂漠化した土地に水路を引き、潤う緑の大地がよみがえった。 「武器ではなく、いのちの水を」とはETV特集のタイトルであるが、銃弾に倒れた中村さんを思う時、憎しみではなく、私たちは何を大切にすべきか。あらためて問いたい。 中村さんは、クリスチャンであったそうだが、人と人とが認め合い、喜びを分かち合う世界を願うことに、宗教や宗派という垣根は越えられると信じたい。 ちなみ

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今月の言葉

今月の言葉6

ある日、東本願寺の渡り廊下を歩いていると、掲示されているこの言葉に足が止まった。 「私は学習会に行ったりしているが、その場に行ったことに満足してそこから何か変わっただろうか。ただの知識になっているのではないか」 前々から思ってはいたけれど、なるべく考えないようにしていた自分の心を言い当てられたような気がして、ぎくっとしたからである。 今まで何度も「生活の中で念仏するのではなく、念仏の上に生活がいとなまれる」と和田稠先生の言葉を講義などで、うんうんと頷きつつ聞いてきた。しかし、できていない自分に気づきはしても「あ~できないなぁ」で終わらせている私がいた。

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今月の言葉

今月の言葉5

この言葉は親鸞聖人がお亡くなりになる2、3年前にお弟子さんに対して「私はすっかり年老いてしまった為、きっとあなたよりも先に亡くなることでしょう。しかし、必ず浄土で待っています」とお話になった言葉だと言われています。 私の父は今年(2019年)亡くなりました。 父が亡くなってから「大切な人を亡くすことはこんなにも辛いのか…。辛いというよりも胸がしめつけられるように苦しい…愛別離苦の苦とはその通りだな」と思いながら何気なく本をめくっていると、この言葉に目がいき手が止まりました。 「待つ」という時には、その相手が「どうしているだろうか、もうすぐ来るだろうか」などと相手の

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今月の言葉

今月の言葉4

仏法はこれから聞くのではない。 「今すでに」聞いている。もうすでに聞き終わっている。 仏法は寺の本堂にあるのでもなく、山の上にあるのでもなく、毎日の生活の中にあった。 私の人生がすでに仏法の中にあった。 法を聞き、ああ、なるほどほんとうにそうだなと思えるというのは、今まで形が見えなかっただけで確かにそこにあったものが、光に照らされてくっきりと浮かび上がってきたということなのではなかろうかと思う。 その衝撃と驚きと喜びと。 我を照らしだす光がある。 「三帰依文」より (島 充)

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今月の言葉

今月の言葉3

人間に生まれて50年、これまで何度かとんでもない失敗をやらかしてきた。 その度「今度こそ立ち直れん。オレなんか存在する価値ない。」と凹んだ。 そんなときに、再び立ち上がる勇気を与えてくれたのがこの言葉。 かつて大谷専修学院で学院長を務められた信国淳先生は「いのち みな生きらるべし」と語られた。 通じるものを感じます。 油屋 熊八 今や世界的温泉都市、大分県別府市の観光開発に尽力し、湯布院の礎を築いた実業家。クリスチャン。 「別府亀の井ホテル」創業者。 今回ご紹介した言葉は、出典がはっきりしないが、一説によると油屋 熊八の言葉と伝えられている。明石家さ

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